「子どもの参画情報センター」設立の趣意書

 子どもの権利条約には、子どもの意見表明権が謳われ社会と積極的に関わることが権利として認められています。子どももまた社会的構成員の一員であることを認められるということです。ではいったい私たちおとなは、どれだけ子どもを社会的な存在として信頼してきたでしょうか。成長・発達の過程にある子どもはさまざまな点で社会的に守られるべき対象ではあっても、同時に子どもには子どもらしさのおとなにはない社会的な力を持っています。そして市民としてさまざまな問題に主体的に参画し解決する能力があることも、私たちは改めて「子どもの参画」をキーワードとするテーマとして見逃すわけにはいきません。

 このテーマの掘り下げには、子どもがいろいろな活動に参画する能力を「参画のはしご」としてモデル化するとともに理論化し、世界各地の事例をあげながらその実践例や具体的な方法論をまとめたロジャー・ハート氏の著者『子どもの参画』(日本語版刊行、2000年)が不可欠であり、また「子ども参画情報センター」の設立にあたっての導火線ともなりました。日本語版の刊行以来、本書の内容が子ども観や子ども(とおとな)の問題をはじめ、21世紀の世界と私たちの国の子どもと社会のありようを考えるうえでも鋭い問題提起として、実践的にも、あるいは研究的にもさまざまな分野で注目されています。

 私たちは、このハート氏が示唆する世界的な名著を机上の文献のみにとどめず、日本の現状における「子どもの参画」について大いに議論し広く活動する「糧」として考えています。さまざまな立場の実践例から、子どもの参画についてもっと具体的に掘り下げ、課題を整理し、私たちの文化や社会における方向性を見出していきたいと願っています。私たちは自主的で緩やかな合意の基に組織する「子どもの参画情報センター」(準備会)をここに立ち上げ、各地で展開する子どもの参画に関する情報の「受け皿」として、また「発信する場」として、これから取り組んでいきたいと思います。皆さんの幅広いご参加を期待いたします。

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